院生奮闘記

世の益にならないことを猛烈に書き殴っていきます。

あつまれ!もっくんの森

インスタグラムのストーリーに、ある動画をあげたところ、少なからぬ反響があった。「気色の悪い木のバケモノをあげるな」「キモカワ」「不気味すぎ」「どうぶつの森しようぜ!」と。

 

だからこそ、今、語らねばならない。

もっくんのことを。

もっくんが抱える秘密のことを。

 

 

大阪を南北に駆け抜ける地下鉄道の最北端・千里中央駅から、さらに北に歩くこと5分。昼夜絶え間なく車の行き交う幹線道路に隣接した緑地帯を取り囲む、錆びたフェンスのその上に、奴はいる。ストレス社会を生きる現代人の伏し目がちな視線を避けるように、高さ約1.5mの柵に覆いかぶさる形で、通行人を見下ろしている姿が憎らしい。

僕らはこの謎めいた存在を「もっくん」と呼ぶ。

 

もっとも、「もっくん」というのは通称で、もっぱら僕と、僕が所属する非営利団体TKGフィールドワーク部〉の特攻隊長N氏の間でしか使われているのを聞いたことはなく、本名は杳として知れない。木の精なのか、何なのか、正体も定かでない。

 

ともあれ、もっくんがこの北摂界隈で時折話題にあがるのは、ひとえに、常に季節を意識した彼のファッションセンスゆえだと言ってよい。夏は虫取り網を携えた麦わら帽子少年、秋はとんがり帽子を被るパンプキンの精となり、年の初めは自ら鏡餅に擬態する荒技を披露してくれる。時節を反映した彼の的確な衣替えには、北摂民一同、驚嘆を禁じ得ない。

 

そんなもっくんも、昨今の世相を敏感に嗅ぎ取ってか、今日はマスクを着けていた。

 

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心なしか、目にも生気がなかった。よく見ると、もっくんのマスクは手作りのそれで、マスク不足が叫ばれるこのご時世に、わざわざ特注のマスクを作るとは、ウイルス満載のサラリーメンが往来する道を住処とするもっくんの防疫意識の高さを窺わせて余りある。

 

だけれども、例のN氏のきわめて胡散臭い情報筋によると、何やら1人の「外国人」が、衣装を手に、もっくんに接触しているのを見た人がいるとかいないとか。通行人見物を生業とするもっくんだから、おいそれとここから離れるわけには行かず、手下の者に衣装を運ばせているのかもしれないが、真相は闇の中。

 

 

外出自粛ムード漂う午後のひととき、息抜きがてら散歩に出かける北摂民は、是非もっくんの森を探してみてほしい。運が良ければ、もっくんコーディネーターの「外国人」にも逢えるかもしれない。