院生奮闘記

世の益にならないことを猛烈に書き殴っていきます。

唐突な本の紹介とミジンコ的研究をしている僕

時刻は18時25分。

「こんにちは」と言うべきか、「こんばんは」にすべきか、ダンディズムを振りかざして「グッド・イヴニング」にしてみるか、実に迷う時間帯。

 

さて、ここで唐突に、本の紹介でもしてみようかと思います。

 

先日、サンキュータツオという名前からして怪しさと疑わしさしかない人物の書いた

『ヘンな論文』(角川文庫、2018年)なる本を読みました。

この本、著者が長い年月をかけて、大学の図書館を這いずり回って集めた古今東西のヘンテコ論文をひたすらに紹介するという内容。

 

例えば、

傾斜面に着座するカップルに求められる他者との距離」なる論文。

なんでも、公園に座るカップルの滞在時間はどれほどか、どんな姿勢であったか、はたまたどのくらい密着していたか、という疑問を、ひたすら観察を繰り返して考察したものらしい。観察日数は4日、観察対象は352組のカップル。352という狂気的な数字だけで、もはやこの論文を書いたエライ先生の感じたくもない熱意を感じさせられます。

 

はたまた、

行動伝染の研究動向 あくびはなぜうつるのか」という論文。

ヒトからヒトへあくびはなぜうつるのか、という研究テーマを論じたもの。内容は、本書を読んでいただくことにして、興味深かったのは、ヒトは言わずもがな、チンパンジーでもあくびは伝染するという研究結果。あくびの伝染に全身全霊をこめる研究者たちの、いわば “あくび研究史” の一端が垣間見れます。

 

あるいは、

コーヒーカップとスプーンの接触音の音程変化」なる論文。

コーヒーカップにコーヒー粉末を入れ、お湯を入れてスプーンでかき混ぜると、スプーンとカップのぶつかる音が徐々に高音になっていくという現象を、ド文系の僕には何やらわけのわからない精密機器を使用して証明した論文だとか。知的好奇心の赴くままに調べ尽くそうとする研究者の姿は、あっぱれそのもの。ちなみに、中学時代の音楽成績が3年間を通して5段階中2だった僕には、音の高さ低さはわかりません。

 

 

と、まあこういうふうに、奇想奇天烈な論文が計13本にわたって紹介されています。

日本の研究界の薄暗い隅っこで背中を丸めている1人の院生として、「研究とは何ぞ」を再確認すべく、この本を手に取ったわけであります。

しかし、本書を読み進めていくうちに痛感せざるを得ないのは、偉大な先輩たちのオリジナリティ溢れに溢れる研究のジャイアントパンダ的マクロさと、それと比較した時に感じさせられる、自分の進めている研究のミジンコ的ミクロさです。僕はなぜこんな研究をしているのか、てんで意味がわからなくなってきた。責任とれサンキュータツオ

 

ともあれ、研究者を目指しているひねくれ院生の方はもちろん、調べるという行為に興味をお持ちの方には、本書を是非おすすめしたい。そして、人間の知的好奇心の偉大さを思い知らされるがいい。

 

 

それでは、グッド・イヴニング。